SEOの一種として、『逆SEO』というものがあります。
それを専門としている業者もあり、営業を受けたことがある人もいるでしょう。
しかし本当に逆SEOは必要なのでしょうか?そもそも手を出して良い行為なのでしょうか?
今回は逆SEOについてその手法から対策まで説明します。
逆SEOとは?
逆SEOとは言葉の通り、通常のSEOとは反対に検索順位を意図的に下げることを言います。といっても自分のサイトの順位を下げたいということは通常ありませんので、主に他社(検索上のライバル)の順位を下げる目的で行われます。ネガティブSEO、リバースSEOなどと言うこともあります。
ではなぜ逆SEOが必要なのか?というと、主にクレームや誹謗中傷対策です。
会社や商品・サービス名などで検索したとき、その会社や商品のページよりも批判的なコメントや口コミの書かれているサイトが上位に来ていると、せっかくの見込客も購入を躊躇してしまい売上に大きく影響がでます。もちろんそういった批判的なサイトよりも自社のサイトが上位に来るように通常のSEO対策にも力を入れるべきですが、100%確実に1位を取ることは難しいですし、仮に1位を取っても2位、3位と複数のサイトが自社に対して批判的なことを書いていれば結局はネガティブな意見も目についてしまいます。検索エンジンの仕様もあって、検索順位の1ページ目全てを自社のサイトで埋めるというのは現実ではありません。
そのためビジネスの場では自社にとって不都合なサイトの順位を意図的に下げる目的で、しばしば逆SEO施策が取られます。
逆SEO対策の方法
では逆SEOにはどのような手段があるのでしょうか?
よく行われる施策をチェックしておきましょう。
スパムリンクを送る
検索順位と言えば『リンク』です。通常、リンクは自分のサイトの順位を上げるために獲得するもので、場合によっては自作自演のリンクを行うこともあります(ブラックハットSEO)が、最近のGoogleはスパムの検知精度が非常に高いため、安易に自作自演でリンクを送ってもペナルティを受けてしまいます。
しかしそこを逆手にとって、質の悪いリンクをライバルサイトに大量に送ることで「このサイトはブラックハットSEOを行っている悪いサイトだ」とGoogleに認識させ検索順位を下げたり、インデックス削除に持ち込みます。逆SEOのもっともポピュラーな手法がこのスパムリンクです。
ただし以前はGoogleもガイドラインに違反するリンクがあった場合に自動や手動でのペナルティを与えていましたが、現在ではスパムリンクを検知してもそれを無効化するだけでペナルティはよほどのことがないかぎり与えない、という旨の発言もあります(たしかにひと昔前と比べてリンクに対するペナルティを受けたと耳にする機会は激減しました)。
Sure, but there are many levels, and most of the time, the algorithms take care of neutralizing the issue on their own. For example, if we can neutralize the effect of bad links, that's enough; there's no need to remove the site completely from search then.
— johnmu (official) — #StaplerLife (@JohnMu) February 9, 2021
TwitterでとあるユーザーがGoogleのジョン・ミューラー氏に、
「Googleは本当にペナルティをあたえているのか?競合サイトのバックリンクを分析したところ、それらは有料リンクだった。しかし検索結果には表示されている。ウェブスパムチームは機能しているのか?」
という質問をしたところ、ジョン・ミューラー氏は、
「もちろん対処はしているが、対策にも様々なレベルがある。そしてほとんどの場合アルゴリズムが無効にしていて、悪質なリンクを無効にできれば十分であり、サイトを完全に検索結果から削除する必要はない」
と答えています。
そのため、一生懸命ライバルサイトにスパムリンクを送ったところで無効化されるだけで意味がない、なんてケースも往々にしてあるでしょう。
コピーサイトを大量生成する
またコピーサイトを大量生成するというのも逆SEOでは定石です。
Googleはオリジナルのコンテンツを尊重し、低品質なコピーサイトを嫌います。そこを利用し、ライバルサイトのコピーサイトをツールなどで大量生成し、コピーサイトもろともペナルティを受けさせる…という手段があります。またペナルティとは言わずとも、同様のサイトが複数ある場合Googleもどのサイトの順位を上げていいかわからず、ライバルの本サイトの検索順位が下がるという可能性も。
ただしGoogleはインデックスに登録された日時などをもとにどれが本物のサイトでどれがコピーサイトなのかを判断しているため、後からコピーサイトを作ったところで効果がない場合もあります。
複数サイトをランクインさせる
コピーサイトではないけど、自社や競合他社が狙っているキーワードと同じキーワードで大量にサイトを作って、それらにSEO対策を施し検索結果を埋め、ライバルサイトの順位を相対的に押し下げるという方法もあります。
Googleは検索結果の多様性を重視します。同じサイトばかりが検索結果を占有していても情報が偏り、ユーザーのためにはならないからです。そのため以前は1ページの検索結果に表示されるのは1ドメイン2ページまで、という制限がありました。現在はその制限は解除されて理論的には1ドメインで何ページでも検索結果に同時に表示されますが…現実には一つのサイトが検索結果の1ページ目を占有するというのは難しく、よほど他サイトにまともな情報が無い場合などを除き起こりません。
そのため、それぞれ異なるドメインで複数のサイトを作り、それらのサイトで検索結果を埋めるほうが実現可能性としては高いでしょう。ライバルサイトに何かネガティブな仕掛けをするわけではないので、逆SEOの中では比較的まともな手法と言えます。
ウイルスに感染させる
他にはウイルスに感染させる、なんて手法もあります。
マルウェアなどに感染したサイトは危険なサイトとして認識され、検索順位が下がります。またウイルスに感染し正常にサイトが表示されないことで検索ユーザーのサイトの滞在も激減し、表示回数などユーザー行動の点での評価が下がり結果として順位が下がるという効果もあります。
ただ非常に危険な行為ですし明確な犯罪行為ですので通常はこのような手段を取ることはありません。
DMCAの悪用
デジタルミレニアム著作権法(DMCA)というアメリカの法律がありますが、GoogleではこのDMCAに基づき権利侵害をしているWEBサイトの削除申請を行うことができます。たとえば自社のコンテンツをそっくりそのまま盗用したようなサイトを、検索結果から除外してもらうことができるのです。
このDMCA申請の制度を悪用して、本来問題ないはずのライバルサイトを検索結果から除外するというのが、逆SEOの手法になります。たとえばライバルサイトがフリー素材を使っているにもかかわらず、「勝手に写真を利用された」と虚偽の申請をして、それが通ってしまうとライバルサイトは何の問題もないのに検索結果に表示されなくなってしまいます。またさきほどのコピーサイトの話と関連して、投稿日時を過去の日付に弄るなどして、自分のサイトこそがオリジナルだと主張をすることで削除申請を行うなんてことも。
スパムリンクなど従来の対策の効果が薄れてきていることで、より簡単で効果的な方法として近年このDMCA悪用は急増しました。
逆SEOへの対抗手段
今見てきたように、基本的に逆SEOというのはまともな理由、まともな手法ではありません。それが自社にとって不都合なサイトだとしても、安易に行うべきではないのです。
ただ一方で競合他社が良識を持ち合わせていない場合、自社が逆SEOの対象になってしまうこともあるでしょう。
そんな場合どうすれば良いのでしょうか?逆SEOへの対抗手段も説明しておきます。
リンク否認
逆SEOの定番であるスパムリンクですが、自分のサイトに付けられているリンクは判断をGoogleに任せるのでなく自分でも否認することができます。
Googleのサーチコンソールにサイトを登録している場合、サイトに張られている外部リンクを確認することができます。ここで身に覚えのないスパムリンクがあれば、それをリンク否認ツールに申請して削除することができるのです。
自力で削除できるリンクはまず自分で削除したり、サイトの所有者に連絡して削除してもらう必要がありますが、基本的にスパムリンクを送っている相手が対処することはあり得ないので、自力での対処が不可能な場合はリンク否認ツールを使用しましょう。
DMCA申請の正当な利用
また悪用は厳禁ですが、自分が権利を所有しているコンテンツであれば、正当にDMCA申請をするのも手です。たとえばコピーサイトが大量に作られたとき、そのままでは自分のサイトがコピーだと判断される可能性があったり、コピーサイトと一緒に順位が下がってしまう可能性があります。そんなときは迷わずDMCA申請をすると良いでしょう。
逆に自分がDMCA申請されたときも、サーチコンソールに登録していれば通知が届き、問題のないページだと判断されれば再び検索結果に掲載されますから、自衛という意味でもサーチコンソールに登録しておくのは必須です。
逆SEOは安易に手を出すべきではない
ここまで逆SEOについて解説してきましたが…読んでもらえばわかるように、基本的には逆SEOは安易に手を出すべきものではありません。
逆SEOも最近は効力が薄れてきていますし、逆SEOを行ったことが発覚して、ネット上で大炎上することでかえって被害が拡大した…なんて例も実際に存在します。
たとえ自社にとって不都合な意見が書かれているサイトであっても、それが言いがかりなどではなく真っ当な意見なら受け入れて商品やサービスの改善に努めるべきですし、それが不当に自社の評判を貶めるものであれば、逆SEOではなく法的手段に訴えるのも手でしょう。
自衛の手段として逆SEOの知識は持っていても良いですが、自分でそれを実行することにならないように日頃から気をつけましょう。