技術の進歩が著しい今日、日々新しい情報やツールが登場しています。
特にAI分野の発展は目覚ましく、2022年11月にはOpenAIが高度な生成型AIのChatGPTを発表し世界中を席巻。その影響力はGoogleが「コードレッド(code red=自社ビジネスに深刻な影響を与える緊急事態)」を発令したほどとされ話題になりました。
(※コードレッドに関しては後にGoogleCEOのサンダー・ピチャイ氏が「私が宣言したことではない」と部分的に否定しています)
そんなAI分野の急速な発展に伴い、2023年はAIで生成したコンテンツがWEB上に溢れていますが、そうなるとWEBマーケティング業界的に気になるところとしては、「(主にSEOの領域で)はたしてGoogleなどの検索エンジンは、AIが自動で生成したようなコンテンツを評価するのか?」ということです。
この点、GoogleはAIコンテンツの評価に関して見解を発表していますので、そちらもふまえて「SEOでAIコンテンツは評価されるのか?」を考えていきましょう。
AIによる自動生成コンテンツに関するGoogleの見解
それでは早速、GoogleのAIコンテンツに対してのスタンスを見ていきましょう。
Googleは2023年2月、Google検索セントラルで「AI生成コンテンツに関するGoogle検索のガイダンス」を発表しています。
詳細に関しては一度全文目を通してほしいのですが、一部抜粋すると、
コンテンツがどのように制作されたかではなく、その品質に重点を置く Google の姿勢は、信頼できる高品質な検索結果をユーザーに提供するうえで、長年にわたって有用な指針となってきました。
たとえば 10 年ほど前には、人の手によって作成されてはいるものの内容的には量産型のコンテンツが増加し、当然とも言える懸念の声が上がりました。それでも、この問題に対処するために、Google は人間が作成したコンテンツを検索から締め出すべきだと考えた人はいなかったはずです。むしろ、本当に良質のコンテンツを高く評価できるよう、システムを改善することのほうが理にかなっています。Google はそのように対応しました。
質の高いコンテンツの評価に重点を置くことは、Google が創業以来、軸としてきたことです。その方針は今も変わらず、信頼できる情報を表示するように設計されたランキング システムから、ヘルプフル コンテンツ システムにまで徹底されています。昨年導入したヘルプフル コンテンツ システムは、検索でよい掲載順位を獲得することを目的としたコンテンツではなく、ユーザー第一に作成されたコンテンツを検索者が確実に見つけられるようにするための仕組みです。
とのこと。
コンテンツがどのような方式で制作されたかは問題ではない、つまりAIによる自動生成コンテンツだとしても、それが有用であれば問題は無いとのことです。
実際、Google検索のランキングアルゴリズムにおいてもAIは以前から利用されていますし、ChatGPTの対抗馬としてGoogleも対話型の生成AI『Bard』を英語圏で試験的にリリースしていますので、このあたりは納得のいくところでしょう。
またGoogleは、
自動生成コンテンツに関し、Google は一貫したガイダンスを提示してきました。検索結果のランキング操作を主な目的として、コンテンツ生成に自動化(AI を含む)を利用することは、スパムに関する Google のポリシーに違反します。
Google には、検索結果を操作するために使用される自動化への対抗策を講じてきた長年の実績があり、SpamBrain システムの開発などはその一例です。スパムがどのような方法で生成されようと、Google はこうしたスパム対策の取り組みを続けていきます。
とも話しています。検索順位をハックする目的としたAI利用(スパム的な利用)は当然NGだということですね。この点に関しても以前からの一貫したスタンスなので、特に問題はないかと思います。
特に目新しい発表やこれまでのスタンスが覆るような内容があるわけではないですが、ひとまずAIコンテンツ=スパムとして扱われるわけではないということがわかりましたので、今後はAIを活用したSEO施策なども生まれてくることでしょう。
本当にAI生成コンテンツは評価されるのか?リスクは無いのか?
Googleの基本姿勢については今ご紹介したとおり。AIを利用して生成したコンテンツであっても、それがユーザーにとって有益であれば問題はないということですね。
となると、これまで人力・手動で行ってきた作業をAIで代替することでより早く・効率よくできる部分も多々ありますので、できることならAIを積極利用してWEBマーケティングの施策にも活かしていきたいところですが…
実際のところ、AI生成のコンテンツは評価されるのか?AIの活用でより効果的・効率的なSEO対策は可能なのか?という点に関してはやや疑問が残ります。
独自性を重視するGoogleとAIコンテンツは相性が悪い
今日のGoogle検索では『E-E-A-T(経験-専門性-権威性-信頼性)』を満たすことが重要とされています。
さきほどもご紹介した「AI生成コンテンツに関するGoogle検索のガイダンス」でも、
Google のランキング システムは、E-E-A-T(専門性、エクスペリエンス、権威性、信頼性)で表される品質を満たした、オリジナルかつ高品質のコンテンツを評価することを目的としています。
と冒頭部分で述べているくらい、Googleでは現在、独自のコンテンツを評価する向きがあります。
さらに後段でも、
すでに説明したとおり、コンテンツの作成方法を問わず、Google 検索で成功を収めるには、E-E-A-T の品質を満たす、オリジナルで高品質な、ユーザー第一のコンテンツの制作を意識する必要があります。
E-E-A-T のコンセプトについては、有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成ヘルプページで確認できます。さらに、このページを更新して、「誰が、どのように、なぜ」という観点からコンテンツ制作の方針を考えるためのガイダンスを追加しました。
AI 生成コンテンツを使用しているかどうかにかかわらず、このような方法でコンテンツを評価することにより、Google 検索システムの評価基準に沿ったコンテンツの作成が可能になります。
と念押ししているように、「誰が?」「どのように?」「なぜ?」書いたか、ということに非常に重きを置いていることがわかります。
そうなると、誰でも簡単に大量生成できるけれど、誰が作っても同じようなものが生成されるAIコンテンツとGoogleの評価基準との相性は悪いと言えるでしょう。
実際、直近(2023年3月)に実施されたコアアルゴリズムアップデートでも、ドメイン重視の評価からコンテンツ重視の評価に寄ったような傾向が見られています。またAI等のツールで大量生成されたようなコンテンツはアップデート前には急激に上昇していたものの、その後急落した事例がいくつも見られました。
これはスパム的なコンテンツと判断された可能性もありますし、Googleが検索セントラル内のよくある質問で回答しているように、
コンテンツの作成者を AI としてもよいですか?
Google は、コンテンツの一部に AI を使用していることを読み手に明確に伝えることを推奨事項としていますが、著者の署名欄に AI と記載することは、その方法としてふさわしくありません。
どんなAIを使用していたにせよ、AIそのものは信頼性や権威性など、E-E-A-Tを担保することができないのが一因と考えられます。
そうなると必然、AI生成によるコンテンツをそのまま利用しても、Googleが重視するE-E-A-Tの観点からは高評価を得にくいでしょう。仮にベースにはAIを使用したとしても、その後専門家など権威性や信頼性の担保できる人間の目による監修が不可欠になります。
※AIかどうかの判断基準は?偽装は可能か?
それではGoogleはどのようにAIコンテンツを判断しているのでしょうか?
たとえAIを使っていたとしても、それがたとえばChatGPTのように高度な自然言語処理が可能で、まるで人間が見ても人間のような文章を生成するものであればAIと判断されずに効率良くコンテンツを生成できるのではないだろうか?なんてハック的な発想にも行き着くのですが…
残念ながら、AIコンテンツをAIではなく人間が作ったものであると偽装することは難しいでしょう。
さきほども少しだけ触れましたが、直近のアップデートでもGoogleは自動生成系のコンテンツを検出し評価を見直しています。またコンテンツがAIか否か?を判断するツールは様々な企業や研究機関、あるいは個人の手によってすでに開発され世に出ていますが、それらのツールを使えば現時点でも高精度でAI生成コンテンツを見極めることができます。それがたとえ人間の目には自然に見えるものでも、です。
このようにGoogle以外の企業や研究者が検出できるものを、天下のGoogleが判別できないとは正直考えにくいです。またGoogle自身がスパム対策などに以前からAIを使用しており、新たな『Bard』AIの開発にも力を入れていることからも、Google検索においてAI生成コンテンツかどうか?は今後より高精度かつ高頻度で、ゆくゆくはリアルタイムで判断できるようになっていくでしょう(もしかすると表立って公表されていないだけで、現時点でも判別できているのかもしれません)。
これを回避するにはさきほども説明したように、ベースはAIで生成しつつも最終的には人間の手によって推敲・校正したりと手を加えるするなどしてAI生成そのままの文章ではなくす…などの方法が考えられますが…
そこまでしているのであればもはやそれはAIでの生成コンテンツとも言い難いですし、それがユーザーにとって有益なものであれば評価されても当然です。またそこまで労力がかかるとすると、少なくともスパム目的での大量生成は難しくなりAIを使う利点が薄れますから、いずれにせよ「AIを使って自動化して楽をしよう」といった発想の元コンテンツを作っても、Googleに評価されるよなものを作るのは難しいというわけですね。
AIコンテンツとGoogleのSEO評価についてのまとめ
今回はAI生成のコンテンツはGoogle検索においてどのように評価されるのかについて解説しました。
要点をまとめておきます。
- AI生成のコンテンツだとしてもそれ自体は問題ではない
- AI生成コンテンツではE-E-A-Tの担保が難しい
- AIで楽をしてSEOでの高評価を獲得するのは難しい
ここ最近、ChatGPTなどをはじめ革新的なAI技術やツールが次々と登場しているため、「AIで何でも便利になる」「全てAIに任せておけばなんとかなる」なんて誤解も生まれがちですが、AIはあくまで補助的ツールに過ぎません。結局はそれを使う人間次第で結果も左右されます。
また、ことSEOという観点に立つと、AI生成のコンテンツをそのまま使ったところで高評価は得づらいので、使い方にも工夫が必要です。
AIを使うにしろ使わないにしろ、SEOで評価されるためにはまずSEOについての基本的な理解を深めなければいけないことは大前提として押さえておきましょう。